
労働者劇団つぶれそう一座
自主公演2015
【演劇】
かあちゃん
~銃後長屋物語~
(第4稿)
原作・山本周五郎「かあちゃん」(新潮文庫)より
労働者劇団つぶれそう一座
自主公演2015
【演劇】かあちゃん ~銃後長屋物語~
(第4稿) 原作・山本周五郎「かあちゃん」(新潮文庫)より
脚本・和田夏十・竹内 洋
脚色・野崎佳史
『人間の良心を貫いた人々』
台本によせて~2015年8月3日(月)野崎佳史
日本の政治家が勇ましく「安全」と叫んでいる時ほど危険です。東日本大震災で原発の安全が神話だったことが明らかになりましたし、国民の安全を守るための法改正だと言う戦争法案も、戦争になれば安全な場所へいち早く避難するのが政治家だということも歴史が証明済みです。
東京大空襲の戦火の中を逃げ惑っていたのは銃後の守りをしていた女性や年老いた方々、幼い子どもたちでした。福島原発事故の修復に向かったのは、政治家でも東電の幹部でもなく日雇いの低所得者でした。国民が最も危険にさらされている時に、政治を遂行者は一番安全な場所に逃げています。戦地に安全な場所など絶対にありません。
私たちは、いったん戦争が始まれば人間の心が破壊されてしまうことを多くの戦争体験者の証言や、戦争遺跡から学びました。その中で人間の良心を捨てず生き抜いた人がいたことも知りました。山本周五郎さんの「かあちゃん」は江戸が舞台の人情時代劇で戦争とは結びつかないお話ですが、人間の良心を貫いた人々を丹念に描きながら、平和についてみなさんと一緒に考えたいと思い、時代を戦時中に移しかえて新しい「かあちゃん」を創ってみることにしました。
人間は重なり合う良心に支えられて生きていると思います。自分の秘めた良心に触れるような作品になることを願って・・・
(登場人物)
お勝 ・夫が戦死して女手一つで子どもを育てる
勇吉 ・軍隊から逃げてきた青年、20歳
市太 ・長男、大工、17歳
おさん ・長女、16歳
三之助 ・三男、15歳
七之助 ・七男、8歳
大家 ・5軒長屋の貸主
左官男 ・左官工で店子
国民服男 ・店子
宇崎 ・憲兵隊長
源次 ・反戦家
易者 ・街の占い師、お勝の夫の同僚
反戦家 ・街で反戦ビラを撒く青年
憲兵 ・宇崎の部下
朝鮮女工 ・市太の恋い焦がれる女性
(場)
序 章『若い男』
第1場『曰くの銭』
第2場『出所の日』
第3場『近づく追っ手』
終 章『かあちゃん』
序 章『若い男』
暗闇に豆電球が灯っている
大本営発表「開戦の臨時ニュース」
♪臨時ニュースヲ申シ上ゲマス。臨時ニュースヲ申シ上ゲマス。
大本営発表陸海軍部、12月8日午前6時発表。帝国陸海軍ハ今8日未明、西太平洋二於イテ、アメリカ、イギリス軍ト戦争状態二入レリー
太鼓の音―
昭和17年1月31日の昼
名古屋中町、五軒長屋大家の家
4畳半の狭い部屋で酒瓶が転がり、箪笥からは服が飛びだしていている
下手の塀の前には「大東亜戦争に勝ち抜かう!」「電力は戦力!」などの勇ましい戦争ビラが貼られている
国民服を着た反戦家が身を低くして現れ、辺りを注意深く窺いながら、塀の前にやってくる
憲兵が見回りにやってきて、反戦家は一度塀の中に身を隠し、憲兵が去るのを見届けると、再び塀から姿を現し、反戦ビラを貼ると国民帽を深く被って去る
太鼓の音―
ボロボロの軍服を着た若い男(勇吉)が障子からゆっくり顔を出す
勇吉 「―ごめん下さい。ごめん下さいまし。(キョロキョロして)どなたもいらっしゃいませんか?お留守ですね。たしかにいらっしゃいませんね?それじゃあ入らせて戴きます」
太鼓の音
ゆっくり抜き足差し足、後ろ向きで忍び込む
前を向くと部屋の散らかりに驚く勇吉
勇吉 「わ!何だよ。ひでえ貧乏暮らしだなあ。まさか先を越されちゃったかな?さてとー」
太鼓の音、続く
勇吉、軍帽を深く被り、箪笥を物色するが何も見つからずため息をつく
勇吉 「(ため息)金になりそうなものは何もねえ。まさか空き家ってことはねえだろうな」
雨が降ってくる
勇吉 「おや?雨かー」
再び物色を始めるが、今度は大家のご機嫌な鼻歌が聞こえてくる
♪トントントンカラリンと 隣組
格子を開ければ 顔なじみ
廻して頂戴 回覧板
知らせられたり、知らせたり
勇吉は慌てて身を低くするが、歌が近づいてきたので障子の奥に身を潜める
大家は千鳥足でご機嫌よろしく玄関まで来ると大きな声でー
大家 「いま帰ったよ~。と言っても出てくる嬶(かかあ)がいるわけでもねえ。(足跡を見て)ありゃあ、大きな足跡だな。さては泥棒でも入ったんだな。しかし妙な泥棒もあるもんだ。金や物がある所に入って盗るから泥棒なんだが、うちの家に入った所で何も持っていくものはねえ。間抜けな泥棒もいたもんだ」
勇吉、障子の奥から顔を出し苦い顔をする
太鼓の音
憲兵たちが走ってきて家の戸を叩く
慌てて顔を引っ込める勇吉
大家 「はい、どなたさん」
憲兵 「戸を開けろ」
大家 「戸を開けろといいましても戸らしい戸もありませんのでー」
戸が開き、憲兵だと判ると慌てて立ち上がり気を付けをする大家
大家 「け、け、憲兵の方が、何か御用ですか」
宇崎 「この家の者か」
大家 「は、はい。この5軒長屋の大家ですがー」
憲兵の宇崎、辺りを見回しー
宇崎 「貴様、この家に誰か匿っておるな」
大家 「いいえ、誰も匿ってなどいませんがー」
家に上がり込み、歩き回る宇崎、その鋭い目つきは周りを圧倒的な緊張感にさせる
大家はしゃっくりをする
宇崎 「貴様、このご時世に酔っているのか」
大家 「いい、いいえ・・・酔ってなんぞいませんよ」
宇崎が詰め寄ると、障子の奥でガタっと音
宇崎 「探せ」
憲兵 「はっ!」
太鼓の音が激しくなる
部下が奥の部屋に入って行くと「こら、逃げるな、こっちへ来い」という争う声がして反戦家の男が部下に取り押さえられ出てくる
宇崎 「貴様、やはり匿っておったな」
大家 「いえ知りません。留守の間に勝手に忍び込んだようで。(反戦家に)あんた誰?」
宇崎 「貴様にも話を聞く。連れて行け」
憲兵 「はっ!」
大家 「私は何も知りません、本当です。あ~、勘弁して下さい」
大家は必死に抵抗するが、部下に連れ去られ、残った宇崎は残党がいないか部屋中を見回り、障子の前までいくが、中は覗かず、立ち去る
音楽
障子の部屋から勇吉が出てくる
勇吉 「危なかった。やはり先客がいたんだな。(大家が連れ去られた方を見て)しかし、ひでえ世の中になったもんだ」
国民帽を被ると戸を開け、家を出て行く
豆電球が灯る
序 章『曰くの銭』
長屋の角(下手)
夜、犬の遠吠えー
塀の前に勇吉が立つが、気配を感じ後ろに隠れる
左官の男がやっていて、手招きをすると、向こうから国民服の男がやってくる
左官の男 「おい聞いたか、大家が憲兵に連れて行かれたらしい」
国民服の男「聞いた、聞いた。どう間違えたらあの大家が、え~思想犯になるんだ?」
左官の男 「違えね。でもよ、大家が貧乏なのは俺たちが悪いんだぜ。毎月耳を揃えて家賃を払えば、あんな酷い暮らしもしていめえ」
国民服の男「馬鹿いうな。あらな酒癖が悪いんだよ。俺たちが家賃納めた所で、みんな酒に化けちまうよ」
左官の男 「酒だってこのご時世、そうは手に入るめえ」
国民服の男「思想犯ってのはもうちっと頭の良さそうな奴を指すんだ」
左官の男 「しかしこの長屋から犯罪者が出たということになったらー」
憲兵が通りかかり、会話が途切れる
左官の男 「ところでよ、例の件、本当だぜ。ちゃんと聞こえているんだから。毎月、月末には銭勘定しているんだからな」
国民服の男「左官屋!おめえそれを聞いているのか」
左官の男 「聞くめえと思ったって、お勝さんと家は隣同士よ。壁ひとつで聞こえてくるんだから仕方あるめえよ」
国民服の男「今日は月末だ、するってえと今夜もやるわけか」
左官の男 「やるだろう、毎月決まってやってもう2年だ」
国民服の男「ずいぶんと貯め込んでそうじゃないか」
左官の男 「あざとく稼いでいるんだよ」
大家がやってきて大きな声で
大家 「おめえ、またかあちゃんの話だな」
国民・左官「しーっ!」
振り向くと大家で驚く左官の男と国民服の男
左官の男 「大家さん、釈放されたんですか」
大家 「当たり前だ。わしは思想犯でも何でもないんじゃ。しかしこっぴどく搾られたよ。で、また何かあったのか」
左官の男 「例の銭勘定の話ですよ」
大家 「よせよせ。人の銭勘定を頭痛に病むな」
大家の家から、お勝の家に変わり、お勝が登場して銭箱からお金を出して勘定をしている
部屋は整頓されていて、年代物の箪笥と仏壇があるだけの質素な4畳半の部屋
奥にもう一つ4畳半の部屋がある設定で障子で仕切られている
玄関とは反対の方にかまどがある
左官の男 「(国民服の男)おめえはこの長屋の来て日が浅いから知らねえだろうが、お勝さんも前はあんなんじゃなかったんだ、なあ大家さん」
大家 「ああ、涙もろくて気のいい、よく人の面倒をみるおかみさんだった。亭主が出征し、女手一つで子ども7人も育てたんだ」
国民服の男「お勝さんの亭主は」
左官の男 「元は大学の先生をしてたんだが、学者連中で集まって話し合っているときに憲兵に踏み込まれて、国家転覆を企てたとかで、そのままブタ箱行きよ。釈放されたと思ったら、すぐに赤紙がきて、そのまま戦地さ。実際は研究の話をしていたらしいんだが、アメリカと戦争が始まってからは人が集まって話してるだけで怪しまれるからな」
大家 「最近は隣組や国防婦人会などご近所さまでも目を光らせているからね、のんきに話も出来やしない」
左官の男 「あそこじゃ一家全員で働いて稼いでいる」
音楽
市太が出てくる
左官の男 「長男の市太は大工」
大家 「気の良いのんびりとした男だ」
あくびをする市太
三之助が出てくる
左官の男 「三男の三之助は俺と同じ左官だ。強い愛国精神をもっておる立派な青年だ」
おさんが出てくる
大家 「それから娘のおさんよ。これがまたかあちゃんに似て、仕立てでも縫い物でも何でもやってしまうんだ」
左官の男 「おまけに末っ子の七公だ」
七之助が出てくる
左官の男 「あれはまだ8つか9つだろう。真鍮でも釘でも銭になると見れば拾ってくるんだ。一家揃ってあの稼ぎぶりはまるで正気の沙汰じゃねえ」
国民服の男「それもいい、稼ぐのも結構だ。しかし長屋には長屋の付き合いってもんがある。お勝さんは国防婦人会にも殆ど参加しないし、釘や真鍮だって供出しないといけねえだろ」
左官屋 「とにかく、あんなに銭を貯め込んで一体何をするつもりなんだろう」
国民服の男「今にこの長屋一体買い込んで大家にでもやるんじゃねえのか」
大家 「じょ、冗談いうな」
憲兵がまたやってくる
三々五々、散っていく大家たち
―
塀の後ろから勇吉が出てくる
国民帽を被り、去る
犬の遠吠え
お勝の家
銭勘定をしているお勝、それを囲んで見ている子どもたち
おさんは台所で鍋を沸かしている
お勝 「七、今月はよく稼いだね、ほらこんなにあるよ」
七之助 「これ、みんな俺が稼いだのか?」
お勝 「そうだよ」
七之助 「ふ~ん」
おさん 「(台所から)かあちゃん温まったよ、持って」いこうか」
お勝 「ああ、持ってきておくれ」
おさん、鍋を運ぶ
市太 「かあちゃん、どうなった?」
お勝 「どうやら間に合ったね。お前たち、本当によくやってくれたね」
三之助 「俺はかあちゃんに頼まれたからやったんだ」
お勝 「三の字、お前の働きがなかったら間に合わなかったさ、ありがとう。足かけ2年、やる気になればやれるもんだ」
おさんが鍋を置き、蓋を取る
おさん 「はい」
お勝 「さ、食事にしようかね」
三之助 「おお、かあちゃん、今日は珍しく豪勢だな」
七之助 「毎日すいとん食べてるじゃないか」
お勝 「今日は大根やジャガイモが入ってるんだよ」
市太 「ほんとだ、すげえ」
お勝 「今夜はね、ご苦労祝いなんだよ。みんなよく辛抱してくれたからね」
七之助 「三の字、よだれ」
一同、ゲラゲラ笑う
手を合わせて鍋に箸を入れ、美味しそうにすいとんを食べる子どもたち
犬の遠吠え
一方、勇吉は身を潜めながら辺りを窺い、長屋の周りを歩く
電柱の下で易者が気持ちよさそうに居眠りをしている
勇吉、一度通り過ぎるが、易者に声をかける
勇吉 「おい、お勝さんの家は何処だ?」
易者、眼を開け、虫眼鏡で勇吉の顔を見るなり、手を出してお金を要求する
勇吉 「道を尋ねるだけで銭とるのか!」
易者 「―」
勇吉、仕方なくなけなしの銭を出す
易者 「その5軒長屋の一番奥だよ」
勇吉、礼も言わず、国民帽を深く被って去る
易者 「あのお兄さん、不幸な相が出ておるなあ。可哀想に・・。むにゃむにゃ(祈る)」
犬の遠吠え
先ほどまで美味しそうに食事をしていた家族は、奥の6畳間で寝ている
おかつ仕立て物と針を持ち、縫い物をしている
おさん、6畳間から出てくる
お勝 「みんな寝たかい?」
おさん 「ええ」
お勝 「お前も寝ておしまい」
おさん 「(鍋を見て)少し残ったから片づけてから寝る」
お勝 「あんな満足そうに食べてる顔見るのは久しぶりだね」
おさん 「私たちはいいわ。七はまだ子どもだから可哀想。薬屋の息子さん、明日出征だって。うちの軍需工場にも朝鮮の女工さんがたくさん来たわ」
お勝 「早くこんな戦争が終わってくれないかね」
おさん 「かあちゃん」
お勝 「大丈夫さ、こんな夜遅くに誰も聞いちゃいないよ」
おさん 「この長屋は壁一つで声がよく通るわ。めったなこと言うもんじゃないよ。ほら隣の左官屋さん、おしゃべりだから」
お勝 「―これ、おさん」
おさん、冗談っぽく笑う
お勝 「ここはあたしが片づけておくから七と寝てやっておくれ」
おさん 「―うん」
おさん、奥の部屋に引っ込む
お勝が仕立てを始めると、市太が顔を出す
市太 「かあちゃん、駄目じゃないか、少し寝ないと身体が参っちまうぜ」
お勝 「ここの区切りをつければいいんだから」
三之助が顔を出す
三之助 「かあちゃん」
お勝 「うるさいねえ。これはね、期限をきって頼まれたんだ。もう少しやっとかないと間に合わないんだよ。そんなにうるさくしないで寝ちまっておくれ」
三之助 「だって」
お勝 「うるさいったらうるさい」
渋々奥に引っ込む市太と三之助
犬の遠吠え
夜が更け、おかつは仕立てをしながら居眠りをする
ガタっという音に、お勝目覚める
太鼓の音
お勝、立ち上がり台所の方を窺いながら奥の部屋へ引っ込む
表の戸が開き、勇吉が入ってくる
国民帽を被ると足をガクガクさせながら抜き足差し足で部屋に入る
太鼓の音
すると障子の後ろから、お勝が顔を出して囁く
お勝 「静かにしておくれ」
勇吉、慌てる
お勝 「大きな倅(せがれ)もいるんだからね。眼を覚ますといけないから。わかったかい?」
勇吉 「し、静かにしろ。騒ぐとためにならねえぞ」
お勝 「あたしは静かにしてるさ。お前さんが騒いでいるんじゃないか」
勇吉 「ぐずぐず言わないで、か、金を出せ」
お勝 「ああ―、いいよ」
玄関に向かうお勝、逃げられると思い慌てて、お勝の肩をつかむ勇吉
勇吉 「おい」
その手をピシャっと叩くとー
勇吉 「痛てえ」
三之助が「軍人勅諭」の寝言
三之助 「一つ、軍人は忠節を尽くすを本分とすべしーむにゃむにゃ」
驚く勇吉
お勝 「ほらごらん。みんなが眼を覚ましたらどうするんだい。戸を閉めてくる間ぐらい待てないのかい?」
お勝、表の戸を閉め、火鉢の前に座る
勇吉 「金を出せ。金があることはちゃんと知ってきたんだ」
お勝 「少しぐらいならあげるから、とにかくそこに座りな」
勇吉 「舐めやがると承知しねえぞ」
勇吉、座るときに足をガクガク振るわせる
それを見てー
お勝 「お前さん、お腹空いてるんだろ」
勇吉 「誤魔化そうたって、そうはいけねえぞ」
おかつ、無視して鍋を火鉢にかける
勇吉 「何だそりゃ」
お勝 「すいとんだよ」
勇吉 「そんなもん食いに来たんじゃねえ。早く金を出せ」
お勝 「一言聞くけど、まだ若いのにどうして泥棒なんかするんだい?」
勇吉 「泥棒したのは今日が初めてだ」
お勝 「じゃあ家が初仕事って訳かい?」
勇吉 「そうじゃねえ」
お勝 「もうどこかに入ってきたのかい?稼ぎがあったようには見えないね」
勇吉 「つべこべ言わずに出すものを早く出せ」
お勝 「ねえ、何で泥棒なんかするんだい」
勇吉 「そりゃあ、食えねえからよ。志願して軍に入隊したものの、人を撃つ勇気もねえ。で軍隊を逃げて来たって訳だ。仕事しようたって仕事もねえ、食うもんもみんな配給で食事にもありつけねえ。だからやってんだ」
お勝 「(ため息)何て世の中なんだろう。これじゃ遅かれ早かれみんな飢え死にだねえ」
勇吉 「そんなことはどうでもいい。早く金を出せ」
お勝、金の入った箱を出す
勇吉 「それに入っているのか」
箱からいくらか金を出そうとするとー
勇吉 「箱ごとよこせ(うわずり声で)よこさねえか!」
お勝 「―そうかい。あたしはね、倅を起こしてもよかったんだよ。でもそうしなかったし、今だってそうしようは思わない。どうしてもお金が欲しいと言うならあげてもいいよ。けれどその前にこれがどんなお金か話すから聞いておくれ」
勇吉 「―長げえ話か(座る)」
お勝 「長男の市太の仕事仲間に源さんという人がいるんだよ。今から2年前、街で反戦ビラを撒いて警察に捕まったんだ。ちょうど子どもが生まれたばかりで大変な時期に牢に入れられてしまってね」
回想―ひぐらしの声
市太、おさん、三之助、七之助だ出てくる
舞台前で客席に向かって互いに話す
お勝 「源さんのことはみんな、あんちゃんから聞いてるね。みんなはまだ世間のことはよく解らないかもしれないけど、源さんは何も国をどうにかしようなんて思ってやったわけじゃないんだ。今のご時世だから大きな声じゃ言えないけど、この世に授かった命を大事にしろってことを言いたかっただけなんだ。お前達はそれを非国民だと思うかい?」
市太 「―いいや、思わねえ」
三之助以外は頷く
お勝 「思想犯罪人ってことになれば元の仕事には戻れないだろう。それでお前さんたちに相談なんだが、源さんが牢から出てきたときに生活していけるようにしたいと思うんだ」
おさん 「それはいいけど、元手の金はどうするの?」
お勝 「―貯めるのさ」
お勝、子どもたちを見回す
お勝 「あたしたちみんなで稼ぐのさ」
七之助 「俺も稼ぐのか」
お勝 「ああ、そうだよ。七はこの前、釘を拾ってきてくれたね。そうやって売れそうなものを拾ってくれば、それが七の稼ぎになる」
七之助 「いいよ、俺やるよ」
おさん 「文句ないわ」
おさん 「(頷く)」
お勝 「三の字!」
三之助 「俺はー。命を捨てることは恐くねえ。早く国のために闘いたいと思う」
おさん 「三の字」
三之助 「でも、かあちゃんが言うことも、解らないわけでもねえ」
お勝 「ありがとう、三の字」
市太 「すまねえな、みんな。俺の友達のために」
子どもたち消える
お勝 「一家全員で稼いだんだ。みんな外で仕事をしたり内職したりしてね。食べるもの、着るもの、それから長屋の付き合いまで断って、けちんぼ一家と言われても我慢してきたんだ。そうやって2年間かかって元手が出来た。その源さんが明日、牢から出てくる。そういうお金なんだ」
勇吉 「―そんな話、俺に何の関係があるんだ」
お勝 「お前さんが入ってきたとき、あたしは源さんのことを思い出してね、根っこからの悪人なら別だけど、このご時世でひょっと魔が差したのかもしれない。もしそうだとしたら話してみよう、そう思ったんだよ」
勇吉 「―」
お勝 「今の話を聞いても持って言うなら、さ、持ってお行き」
勇吉、肩を落として玄関に向かう
お勝 「ちょっと、何処へ行くんだい」
勇吉 「帰るんだよ」
お勝 「帰るあてがあるのかい?」
勇吉 「―」
お勝 「帰るあてもないのに、ここを出て行ってどうするつもりさ(勇吉を引っ張って連れてくる)。さ、お食べ」
勇吉 「―」
お勝 「(鍋から)お腹空いてるんだろ?ほら」
勇吉 「―へい」
座って箸を取り、すいとんを食べ出す
音楽
お勝 「何て世の中なんだろうね。(前掛けで目を押さえ)」
仏壇に手を合わせる、お勝
お勝 「今夜からここにいておくれ」
勇吉 「(ぐっと涙が溢れてくる)」
お勝 「狭いし、人数も多いけど、まだ1人ぐらいなら割り込める」
勇吉 「(頭を下げる)」
お勝 「そうだ、あんたの名前は?」
勇吉 「―勇吉」
涙を拭く、お勝
すいとんを食べる勇吉
豆電球のみが灯る
第2場『出所の日』
小鳥の囀り
翌日、昭和17年2月1日、朝
塀の前で体操をしている国民服の男
奥の部屋から出てきた、おさんは台所に向かうと忙しそうに働き桶を持って外に出おうとすると、すると表から帰ってきた勇吉と鉢合わせー
おさん 「きゃあ~~(悲鳴)」
おさん、逃げて立ちすくみ、勇吉は何か必死で言おうとする
勇吉 「あ、あの~、その~」
おさん 「―だ、誰?あんた」
勇吉 「あの~、夕べの」
おさん 「―夕べ?まさか泥棒?」
勇吉 「へえ、(と言いかけて)い、いえ勇吉という者で」
おさん 「どうして家にいるの」
勇吉 「いや、それはー」
お勝の声 「それには訳があるんだよ」
お勝が出てくる
おさん 「かあちゃん、どういうことなの?」
お勝 「それをこれから話すから。みんな起こしておいで」
おさん頷き、駆け足で家に入る
お勝 「(勇吉の腕をとって)いいね、夕べ話したように私の言うとおりにしているんだよ」
勇吉 「いや、俺はこれで失礼したほうがー」
お勝 「あんたも聞きわけのない男だね。あたしにまかせておき」
家に入る勇吉、お勝
太鼓の音
塀の前で体操をしている国民服の男
憲兵の宇崎がやってくると、体操を止め、身体を硬直させる
宇崎は男を見つけると
宇崎 「人を捜している」
国民服の男「―へえ」
宇崎 「(写真を出す)歳は25歳で軍服を着た若い男だ。中町のほうで見たという者がいる」
国民服の男「さあ、見ていませんね。何かあったんですか」
宇崎 「この中町の隣組も国防婦人会も国家のためによく働くと聞いている」
国民服の男「それは、ありがたいお言葉で」
宇崎 「もし、その若い男を見つけたら直ぐに知らせるように。万が一匿うようなことをしたら為に成らんぞ。いいな」
国民服の男「―へえ」
お勝、ちゃぶ台の前に座り家族全員揃う
お勝 「この人のことなんだがね、これまであまり縁がなかったから話さなかったけど上町のほうに遠い親戚があって、そこの三男の勇吉っていうんだ。今まで職人をしていたんだが元々身体が弱くて仕事がなくなってね。こんな身体じゃ軍隊にも入れないからって夕べ遅くに家を訪ねてきたんだ。そこで相談なんだけど、あたしは世話をしてやりたいと思うんだがどうだろう?」
勇吉は何も言えず身体を小さくし、他の子どもたちも咄嗟に返答が出来ず互いに顔を見合わせている
沈黙を破ったのはおさん
おさん 「みんな、何で黙ってるの?今、かあちゃんがいったこと断るまでもないんじゃない。あんちゃん」
市太 「(勇吉に)俺は市太っていうんだ。よろしく頼むよ」
七之助 「よろしく頼むぜ、勇さん。俺は七之助っていうんだ。それからこの姉ちゃんはねー」
おさん 「七―」
七之助 「ばあさんっていうんだ。昔からそうなんだ。そう呼ばないと機嫌が悪いぐらいなんだ」
お勝 「おさんでいいんだよ。勇さんには、おさんが初めて会った訳だね」
おさん 「さっきは本当にびっくりしたわ」
七之助 「何事にも大げさなんだから、ばあさんは」
おさん 「うるさいね」
お勝 「三の字―」
三之助 「俺らー、三之助だ。男が国のための戦えないなんて、俺らー理解できねえな。だってそうだろ。今は一億総玉砕で戦わないといけないときだ」
おさん 「身体がよくなったら、考えるさ、ねえ勇さん。とにかく承知してくれてあたしもホッとしたよ」
市太 「かあちゃんが礼を言うことはないよ。なあ、みん」
頷くおさん、七之助
お勝 「(勇吉に)何もかもうちと同じにするからね。お客扱いはしないから我慢しておくれよ」
勇吉 「―へえ」
お勝 「さ、これで勇さんのことは済んだと。それから今日は源さんが出てくる日だ。市、仕事が終わったら迎えに行っておくれ」
市太 「ああ、源さんの顔は俺しか知らないからな」
お勝 「三の字は仕事が終わったら、魚屋に行って鯖をもらってきておくれ。魚はまだ少しなら手に入りそうだ」
三之助 「わかった」
お勝 「これだけは呉々も頼んでおくんだけど、源さんが来ても以前のことを話てはいけないよ。すんでしまったことを思い出さしては可哀想だからね。それから、あたしたちが源さんのためにお金を貯めたってことを長屋の人に決して言うんじゃないよ」
三之助 「わかってるよ」
お勝 「ケチだとか長屋の付き合いを知らぬ奴だとか言いたい放題言われて、ここまで歯を食いしばってやってきたんだ。人助けのためにやったと言えば感心してくれる人がいるかもしれないけど、それじゃあ源さんが一生肩身の狭い思いをする。あたしたちさえ辛抱すればいいんだよ」
市太 「俺たちがケチをして貯めた金だって言われちゃ源さんが気の毒だ」
お勝 「勇さん、お聞きのような訳だから、お前さんもそのつもりでいて下さいよ」
勇吉 「―へえ」
おさん 「はい、お弁当、これ勇さんのよ」
お勝 「さ、忙しい忙しい」
勇吉を残し、全員家を出て行く
戦闘機の通過音―
牢屋の閉まる音がして、源さんが出てくる
まじまじと太陽を見上げる源さん
市太が来て、固い握手をする
夕方
お勝の家
ちゃぶ台の前で寝ころんでいた勇吉が起き上がり
勇吉 「(ぶつぶつと)みんな出払ってしまって留守番とはなあ。おかみさんはうまいこと言ってみんなを言いくるめたが、どうせいつかは俺の身許だってばれてしまう。そうなりゃ優しそうな長男も屈強な三男も俺を酷い目に合わすに違いねえ。さっさとここを出て行きたいんだが、俺がいなくなって泥棒でも入ったら困るしなあ。早く誰か帰ってこねえかな」
三之助の声「ただいま」
勇吉 「ありがてえ、誰か帰って来たらしいぞ」
裏から帰ろうとすると、三之助と鉢合わせる
勇吉三之助「わあ!」
尻餅をつく勇吉
三之助 「勇さん、何してんだい」
勇吉 「痛てて・・・」
三之助 「大事な魚が汚れちまったじゃないか」
籠から飛びだした魚を拾う三之助
勇吉 「―すまない。
勇吉、立ち上がり
勇吉 「しかしここは、よく鉢合わせする家だなあ」
三之助 「勇さんも手伝ってくれよ」
勇吉 「それをどうするんだ」
三之助 「さばくんだ、ほら、こうやって」
勇吉 「―ほう、うめえもんだな」
黙々と作業をする三之助
勇吉 「なあ、源さんってどんな人だ」
三之助 「俺もよく知らないんだ」
勇吉 「知らない人を助けるって、何か変じゃないか」
三之助 「かあちゃんがそうしようって言うから」
勇吉 「またかあちゃんか」
三之助 「―勇さん、前に何かやらかしたのか」
勇吉 「え、あ?(咳をする)何だよ急に」
三之助 「いいや、何か訳があって家に来たんじゃないかって思っただけだ」
勇吉 「―」
三之助 「早く身体を治して軍隊に志願するんだな。いい男がいつまでも銃後の守りじゃ情けねえ」
おさんが帰ってくる
おさん 「ただいま」
勇吉 「(頭を下げる)お帰りなさい」
おさん 「いやだ、びっくりするわ、そんなことしたら」
おさんも慌てて頭を下げる
おさん 「三の字は関心だね。魚をさばいたりして」
三之助 「なんだい、いつものことじゃないか。どうかしてるよ、ばあさん」
おさん 「ばあさんじゃないわ。おさんって名よ、あたしー」
勇吉の方を見て、奥の部屋に引っ込む
三之助 「おかしいなあ、ばあさんって呼ばれて怒ったことなかったんだ、今まで」
おさん、前掛けをして出てくる
おさん 「ねえ、あの話、本当らしいわ」
三之助 「ふ~ん」
勇吉 「あの話って?」
おさん 「市太あんちゃんのことよ。近くの軍需工場に好きな人がいるらしいのよ」
勇吉 「へえ」
おさん 「ね、どんな人だろう」
三之助 「知らないよ」
おさん 「三の字―」
三之助 「痛て、ほら指きっちまったじゃないか」
おさん 「ごめん。私も手伝うわ」
二人で魚をさばいている
アリランが流れる
勇吉、玄関まで行きー
勇吉 「(小さい声で)ここはいい人ばかりで居づらいんだ。ここで失礼しますぜ。さようなら」
小走りで去る勇吉
アリランを歌う女工の影
市太が現れる
市太 「これー」
女性 「―」
市太 「あの、よかったら食べて下さい」
女性 「(礼―)」
市太 「あの、その、仕事頑張って」
女性 「―」
朝鮮女工、踊り出す
華麗に舞う姿は愛らしい
と、突然―
憲兵の声 「こら、そこの朝鮮人、そんな所で何をやっとるか!こっちへ来い。(竹刀で叩かれる音)」
市太 「(何も出来ず立ちつくす)」
風―
市太、肩を落として去る
小走りで走る勇吉
正面から例の男たちがやってくる
慌てて塀の後ろに隠れる勇吉
国民服の男「何だ、おかつさんがどうしたって」
左官の男 「さっき魚屋から聞いたんだがね、お勝さんの所の三之助が魚をたくさん買ってったっていうんだよ」
国民服の男「本当かい、そりゃ」
左官の男 「何を買ってったか聞いたら、鯖を買ってるんですよ」
国民服の男「鯖を?呆れたねえ」
左官の男 「呆れたでしょう」
国民服の男「呆れましたねえ。長屋一同、隣組、国防婦人会にみっともねえ付き合いしか出来ないくせに自分たちだけこっそり戴くとはね~。おう左官屋」
左官の男 「なんだ」
国民服の男「それとも何か。お前はお隣さんだから、お勝さんより招待でもあったか」
左官の男 「ご招待はもとより魚の切れっ端さえくれねえや」
国民服の男「世も末だな、全くー」
左官の男 「俺ら腹の虫が治まらねえ、怒鳴りこんでやる」
国民服の男「俺も一緒に行くぜ」
勇吉の声 「腹の虫が治まらないのはこっちの方だ」
勇吉が塀の影から姿を出す
勇吉 「長屋の付き合いがなんのと偉そうな口をききやがって。汚いのはお前さんたちのほうじゃねえのか。お勝さんはそりゃあ銭は貯めたかもしれねえ。だがそれが何だっていうんだ。誰に迷惑をかけた訳じゃねえんだ。それに銭を貯めたのには立派な訳があるんだ」
左官の男 「?お前さん、誰だい。どこで聞いてた」
勇吉 「その塀からだよ」
国民服の男「訳があるって、どんな訳だ、え~、言ってみねえ」
勇吉 「呆れてものが言えないぐらい立派な訳だ」
左官の男 「早く訳を言ったらどうだい」
勇吉 「それはー言えない、ね」
左官の男 「何を!」
勇吉 「訳を言えない訳があるんだ」
国民服の男「お前さんはそれを知っているんだな」
勇吉 「当たり前だ」
左官の男 「お前さん、一体誰なんだ?」
勇吉 「俺は、昨日、隣町から来たお勝さんの親類の勇吉ってもんだ。(あ、しまったという顔)」
しょんぼり元を道を帰って行く
左官の男 「で、結局、誰なんだ、あいつ」
お勝の家
夕方
勇吉と男たちの会話の間に、お勝も戻ってきて忙しそうに仕度をしている
お勝 「おさん、これお皿に盛って。これを向こうに置いておくれ」
おさん 「あいよ」
勇吉が出てくる
勇吉 「戻ってきちゃった」
お勝 「市太かい?」
勇吉 「勇吉です」
お勝 「勇さん、何処へ行ってたんだい。忙しいんだ、手伝っておくれ」
勇吉 「―へえ」
七之助が飛び込んでくる
七之助 「かあちゃん来たよ。源さんが」
お勝 「そうかい」
お勝、急いで戸口に行く
音楽
市太の後ろを三之助が歩いてくる
長い牢屋暮らしで頬が痩け髭が顔を覆い疲れた様子
お勝 「源さん、お帰り」
源さん 「―へい」
市太 「入れよ」
お勝 「ちょっとお待ち。(持っていた塩を源さんの頭にかける)この敷居をまたいだら、それであんたは綺麗になるんですよ。今の波の花で嫌なことはすっかり消えたんですから。さ、入って下さいな」
源さん 「―へい」
中に入る一同
お勝 「勇さん、そんな所でぼんやりしてないでこっちへ来て座っておくれ」
一同、ちゃぶ台を囲んで席につく
お勝 「みんなご苦労だったね。何もないが始めようかね(盃を持ち)それじゃ源さん、おめでとうございます」
一同 「おめでとうございます」
一同、盃をあける
源さん、一口飲むとうつむいてしまう
お勝 「おめでたい日に泣く人があるもんかね。さ、どんどんやって下さいな」
三之助 「うわぁ。かあちゃん、これ酒じゃねえのか」
お勝 「決まってるじゃないか。お前さんたちにお酒はまだ早いんだよ」
三之助 「けっ、もう仕事場で飲んでますよ」
お勝 「今日はね、酒を飲むんじゃない、ご祝儀だからね」
三之助 「念には及ばないよ」
お勝 「さ、市太、いいね」
市太 「うん」
袋を出す
市太 「これが1年分の生活費、これが次の仕事がみつかるまでの雑費、三月分は用意してあるから足りると思うけど困ったときは何とかするから」
源さん、頭を下げる
お勝 「源さん。話は市太から聞いているだろうが、上町にあんた達、家族の家を借りてすぐにでも生活できるようにしてあります。このお金は借りるわけでも貰うわけでもない。正真正銘あんたたち家族のものですよ。悪い巡り合わせと2年間の辛抱が、このお金になったんですよ」
源さん、頭を低く下げる
お勝 「おめでとう源さん。どうか一家仲良く暮らして下さい」
源さんは呻くように泣き、おさんは前掛けで目を押さえ、市太は笑顔になり、勇吉は腕を組んで天井を見つめ、三之助は立ち上がり台所に行って泣く
七之助がのぞき込んで
七之助 「へ、おかしいな。三の字が泣いてるぜ、かあちゃん」
三之助 「ばか、泣いてるもんか」
源さん 「(手をついて)おふくろさん、ありがとう。みなさんありがとう」
市太が手拭いを頭に巻き歌い出す
やがて歌は家族全員の大合唱になる
♪箱根山 昔や背で越す 駕籠で越す
今じゃ寝ていて汽車で越す
トンネルくぐれば まっくろけのけ
(オヤ)まっくろけのけ
桜島 薩摩の国の 桜島
煙を吐いて 火を噴いて
十里四方が まっくろけのけ
(オヤ)まっくろけのけ